国家レベルの話~出版業は衰退期

九乃、大きく出た

 今回は大きく出まして、国家レベルの話をぶちあげてみます。一般庶民の九乃ですから、特別な情報源なんてありませんし、特別な知識を持ち合わせていませんし、特別な頭脳ももっておりません。

抽象的なお話、得意の

 抽象的なお話ですね、国家レベルとなると。個々具体的な話は大ざっぱにとらえることで、抽象的な話ができるようになります。でも、こういう場合はとかいいだすと、それは具体的ですから、雑然という言葉がピッタリだと思うのですけれど、なにも結論が得られない、混乱したままで終わる会議になります。
 ざっくり大ざっぱ、抽象的な話をして、思考の中で操作がしやすい、一般的で適用範囲が広い、抽象的であることによるご利益ですね、そんなことを目指します。

少子化

 みんな知っていますよね、少子化。日本人が子供を作らなくなっています。
 企業は拡大再生産なんていいますけれど、日本は縮小再生産をしています。日本企業も縮小かもしれないけれど。
 縮小することは、省エネということで考えればよいのですけれど、いいことはそのくらいではないですか。他の面では悪いことばかりだと思いますけれど。

すべての産業に大打撃

 少子化は、産業にとって最大の悪といってよいのではないですか。消費者がいなくなるし、労働者もいなくなります。経営者と資本だけあっても企業は成り立ちません。
 少子化に真剣に取り組まないことに対して、なぜ政府に産業界から批判が集まらないのか。わかっています、その理由くらい。

経団連

 与党と仲良し、経団連ですね。わたくし、企業団体献金を禁止したほうがよいと思うのですけれど、そのように考える人は多くないようですね、あまり聞かない意見です。
 経団連ですけれど、強力な利益団体です。大企業が加盟しています。加盟の条件が厳しいらしく、経団連に加盟すると大企業としての認知が得られるみたいなところがあります。

法人税と消費税

 税制に口を出しますね、経団連法人税をさげろの、消費税をあげろの。おかしな話です。消費税を上げたら物は高くなり、売れる数が減ります。商品を値上げしたわけではないのですから、売り上げは減ることになるでしょう。これは、法人税減税とセットだから、消費税を上げろっていうんですね。法人税減税のマイナスを、消費税のプラスで埋め合わせろって言ってるんです。
 ちなみに、消費税、消費ですから、買ったものを加工して売る企業は、買うときに消費税を払っても、払い戻しになるんです。いや、正確には、売った時にあずかった消費税と相殺して、残れば国に納め、足りなければ国から払い戻しがある。なぜなら、消費していないから。そういうシステムです。産業界、ズルがしこいですね。自分たちは消費税払わないのです。
 法人税を下げるとなにがうれしいのでしょう、経団連経団連というのは、大企業の経営者の集まりですから、経営者がうれしいのですね。
 はい、株主への配当を増やせます。配当しなくても、内部留保というやつですね、企業価値が高まり、株価へ反映されます。株主がもうかり、経営者を、よくやったと評価してくれるわけです。
 なぜ配当を増やせるのでしょう。配当というのは、税金を払った残りです。税金を多く払ったら、配当はもちろん減ります。さらに、税金を払うくらいなら、経費として従業員の給料にしてしまい、従業員と企業でうまくいくようにしようと考えます。こういうの、インセンティブといいますね。経済学です。
 法人税率をさげることは、賃金をさげ、配当をあげるインセンティブを、経営者に与えます。政府というか、与党である自民党がやっていることです。経団連と仲良し。
 労働者からカネを巻き上げ、金持ちである株主に流し込んでいます。経営者の報酬にも流れます。だって、株主の利益を増やした功労者なのですから。

お金がなければ、子供もヘチマもない

 多くの人は労働者です。働いて賃金を得て生活して、子供をつくり、育てます。労働者からカネを巻き上げる仕組みが国に組み込まれていますから、子供をつくり、育てるだけのおカネがない。少子化です。

 国は、少子化対策どころか、少子化推進をしていると見なせます。

もうけなくちゃ意味がない

 日本の産業を考えたら、法人税さげたってダメです。物を売ってもうけなければいけないのです。経営者は、もうける方法を考えて、実行し、企業をもうけさせるのが仕事なわけです。けれど、儲けることができなから、法人税率をさげろといって裏技的に企業の利益をかさ上げしてお茶を濁している。そういう構図。
 産業が衰退したら、困るのは経営者も同じはずです。なのに、なぜ、産業に衰退してほしいみたいなことをするんでしょうか。

雇われ経営者

 大企業の経営者は雇われだからです。任期のうちの数字をよくすることしか考えていない。ガバナンスというんですかね、経営者を監視する人がロクにいないぬるま湯状態ですから、長期的にどうなろうと知ったこっちゃないという経営をしています。
 そんな人間の集まりである経団連の話なんて、本当は耳にいれちゃいかんのです。テレビや新聞は経団連に参加していますから、共同体ですね、経団連の意向を広めようとします。労働者の意見をテレビや新聞がとりあげるなんてことはありません。利害が衝突しますからね、経営者と労働者は。

中小企業

 いままでの経営者というのは、大企業の雇われ経営者のことでした。経営者には、中小企業の経営者もいます。会社が小さいですから、経営者であっても、労働者と距離がちかいのですね。それに、オーナーでもある場合がほとんどですから、長期的にも考えます。五年会社がもてばいい、規模を縮小して浮いた経費を利益に計上できる、従業員が反発したって知ったことではないなんて考えないのですね。従業員が反発したら、もろに生産性に響いて、あっという間に会社が立ち行かなくなります。
 一応のエクスキューズでした。

もうわかりましたね

 出版社の話です。出版は、もはや衰退産業といってよいでしょう。ちょっとやさいい言い方。

ライフサイクル理論

 衰退産業というのはなにか。ライフサイクルというものの話です。グーテンベルグが印刷術を編み出し、出版業がはじまったのですかね。ライフサイクルで言えば、その頃は、導入期というやつですね。はじめて世に出版物があらわれた。数がすくなく、高い。そんな時期です。
 大勢の人が出版物の存在を知り、それいいねと買いはじめる。どんどん刷って、どんどん売れる。そんな時期が成長期。
 もう本なんて当たり前、そこら中にあふれてる。いっぱい出版社あって、山のようにいろんな本が毎月出て、それなりに売れている。成熟期です。
 本以外の楽しみがあり、本屋に行ってわざわざ買って読む人なんてあんまりいなくなった、現在が衰退期です。
 ライフサイクル理論というのは、経営学の説にすぎません。すべての産業にあてはまるわけではないとか、あるひとつの時期をとりあげても、ライフサイクルのどれにあたるのか判断できないとか、批判もありますから、あまりこだわらず、都合のよいときだけ使えばよいのです。現実を理解するためのツールですね。

出版業は衰退期

 出版業は衰退期にあるとわかりました。そういうことにします。衰退期にその業界にいる企業はどうすべきか、処方箋は考えられています。わたくしに説明する能力はありませんから、「競争戦略論」マイケル・E・ポーターとか、気になったら参照してはいかがでしょう。

出版社の動きがわかった

 出版業が衰退期にあるという認識が得られれば、出版社のとる戦略は予想できます。いえ、具体的になにをするか知りませんけれど。
 セオリーは撤退ですね。撤退障壁なんていう概念があったりします。それから、収穫戦略です。みんなが撤退すれば、ひとり留まることによって、残り少ないお客からの売り上げを独占できるだろという戦略。
 どちらにしろ、マーケットが小さくなってゆくのですから、印刷部数は減らざるを得ないのですね。出版点数も減るでしょう。いまはまだそんなことはないかもしれませんけれど、予測です。
 新刊を出版するのは、新製品を開発して販売するようなものです。コストがかかります。コストがかかったら、衰退産業ではもうかりません。少ないお客さんを独占している状態ですから、コストはかけられません。利益率をあげなければ、全体の利益がすくなすぎて、企業が立ちゆかなくなります。
 つまり、新刊をすくなく、既刊を売ってもうけるスタイルです。そういえば、近代文学の本が新装版なんていってフェアーになっていたりします。企業としては、正解です。

少子化対策を要求することはない

 出版社にとって、新しい読者を獲得することは、死活問題だと思うのですけれど。衰退期にある原因のひとつですよね。なのに、あまり気にしないのですかね。少子化を。

 今年生まれた子供が十数年後、自分たちの客になるかもしれないなんて想像できないのでしょうかね。そのころには、本が売れようとどうしようと関係ないと思っているのでしょうかね。
 出版社も企業ですから、すでに書いたように、大企業と同じ体質なのでしょう。

小説家も同じ

 小説家も出版社と運命共同体みたいなものです。協会とか、なにか組織がありますよね、きっと。政府に対して少子化対策しろと声明でも出したらどうかと思いますけれど。
 小説家も、おそらくなにも考えていないのでしょう。ごく少数の人しか考えませんね。びっくりです。いわれたことをこなす。多くの人はそういう生き方をしているようです。
 わたくしは、そういう人に対して、意見を持ち合わせません。話が通じないでしょう?

多角的視点

 国家的な話になると、オッサンくさいといって逃げてゆく人もいるでしょう。けれど、物事を多角的に見るってときには、国家的な視点も重要じゃないですかね。あるいは地球的な視点。身近な主婦的視点とか、国家的な視点とか、複数の視点を行ったりきたりするというのが、多角的視点を手に入れるには大切だと思いますけれど。
 あまり現実的なことばかり考えると、創作の幅を狭めてしまうかもしれませんけれど、作者の認識が作品世界にあらわれますよね。現実を認識しつつ、あえて飛躍して書くというのが理想のように思います。

わたくしたちの生活

 それに国家的な話は、どうしてもわたくしたちの生活に影響します。税制なんてモロですよね。労働者からカネを吸い上げて金持ちにばらまくという国に住んでいたら、税制なんて関係ないなんて言っていられません。