九乃の読書
わたくしは小説をあまり読みませんから、普段の読書はこっちですね。ノンフィクション、科学関係の一般書とか啓蒙書といった感じのものを読みます。
今回は一田和樹「フェイクニュース」(角川新書)のレビューをします。
一田和樹に教えを乞う
わたくしはよく、抽象と具体の話をブログで書いています。
もちろん、わたくしたちはリアルな世界に住んでいてネットも利用しつつ生活しています。
具体的事象が日々、目の前を通りすぎてゆきます。といっても、わたくしはテレビを見ませんし、新聞も読みませんから、たいして通りすぎてはいかないのですけれど。
具体的なものばかりに接しているわけですし、わたくしのような庶民には、そこから抽象し、高所大所から捉え、認識、理解することはできません。能力がありません。
ですから、知性をもった人に教えてもらう必要があるのですね。そうでなければ、なにも知らず、なにもわからず、ただ流されるまま、他人に操られるまま生きてゆくことになります。ピエロです。
そう言われると、嫌だなと感じるものですけれど、言われないと自然となにも知らず式になってしまいます。
ですから、読書をするのですね。知性をもった人に教えを乞うわけです。
今回わたくしは、一田和樹さんに教えを乞うた、そういうことになります。歯を磨きながら本を読んだだけですけれど。
なにが得られる?
今回の読書で得られるものはなんでしょう。小説は楽しみのために読みますから、得られるものなんてありません。いえ、読者が勝手に得ているかもしれませんけれど、本来の目的ではないのですね。なにかを得るというのは。
ノンフィクションの読書はちがいます。なにかに興味をもって、そのことについて知りたいな、理解したいなと思うから読むのです。
フェイクニュースですね。テーマは。ですけれど、本を読むと、フェイクニュースはただフェイクニュースと思っていてはいけないとわかります。はい、得られました。フェイクニュースとは、もっと大きなものの一部なのですね。
本書を読むと、世界的視野において、どういった分野のどういったものとして捉えるべきなのかわかります。
それはハイブリッド戦です。帯に書いてあるから、ネタバレではないでしょう。戦争の分野のハイブリッド戦のなかに、フェイクニュースが位置を占めています。オッサンがちょっとした嘘をツイートしているなんてものでは、まったくないのですね。
高度な知性をもたないと気づけませんね、そんなこと。抽象の力が要ります。
といっても、海外ではそういう捉え方をすでにしているそうですから、一田和樹さんがすごい知性の持ち主だともちあげることはできません。でも、あとで書くように、本書によって第一報を届けたわけですから、大したものではあります。
フェイクニュースはハイブリッド戦の中に位置するのですから、ハイブリッド戦というものを知らなければ、その正体もわかりません。
多くの人は、ボットといわれてもなんのことかわからないのではないですか?ツイッターアカウントの多くはボットで運用されているのですよ?ボット自体が悪ではありませんけれど。
日本が戦争って。
ハイブリッド戦は戦争の一部です。日本はこの戦争に巻き込まれつつあります。
本書では世界の状況を詳しく説明していますけれど、流して読みました。やはり興味が湧くのは日本のことです。日本のことも書いてあります。ぜひ読んでください。
戦争、身近に感じることはあまりありません。自衛隊を戦闘地域に派遣できるほど、日本人は、戦争というものにいい加減になりました。そりゃ、そうです。ずっと他人事で生きてきた人ばかりなのですから。他国民の身になって考える人はごく少数ですね。
でも、日本にいるからって安心していられませんよ。ということに、まず気づく必要があります。
状況はこうです。
物理攻撃以外の方法があらわれたのですね。ネットがあることで社会を攻撃することができるようになった。社会に脆弱性を見つけ、そこを狙う。方法のひとつがフェイクニュース。
破壊されたものを修復するには、時間もコストも破壊するより何倍もかかります。社会を破壊された場合だって同じでしょうね。日本は敗戦から三十年ですか?復興したといわれています。社会を破壊されたら、どうなるのでしょうね。
気になる日本社会の脆弱性、書かれています。
わたくしたちは、フェイクニュースで破壊されてしまうような、脆弱な社会に生きているのです。怖ろしくないですか?そのことに気づきもしなかったら、怖くはないかもしれませんけれど、危険ですね。のほほんと暮らしていて、突然社会がぶっ壊れて、そこいらじゅうで小競り合い、暴力が横行し、殺人まで行われるようになる。社会が壊れるって、そういうことなのですね。
現実の話ですよ?海外では起きていることです。そして、ネットを利用するのですから、日本でも同じことが起きる。日本に脆弱性が埋め込まれている。そういうことです。
攻撃から社会を守る方法
ミサイル攻撃に対して有効なのは迎撃ミサイルを配備するくらいのことじゃないですか。知りませんけれど。すくなくとも、国民が竹槍をふりまわすことではないし、Jアラートが鳴ったら伏せるなんてことでもない。
フェイクニュースは兵器なのだから、考え方は同じですよね。金をかけて国を挙げて対抗手段を準備すること。それがまた国民監視となると困るわけですけれど。少なくとも、竹槍式のしょぼい対策ではおっつかない。軽く考えてはいけないのです。
おい、起きろ!
フェイクニュース、まだ有効な対策はないといってよいようです。できることを手探りでやる。そんな状況ですね。
ミサイル攻撃に備えて、建物を頑丈にするとかいう状況でしょうか。途中で撃ち落とせるよ。そういうの作ったよ。カネ出せば買えるよという状況ではない。
本書は、まず第一報なのです。ぼけっとしている人たちに向けて、おい起きろ、目を覚ませ。いまこんなことになってんだぞって教えてくれているのです。
まずは目を覚ましましょう。目覚ましが鳴っています。