出でよ、電子書籍専門出版社!

 出版業界に必要なのは、新しいタイプの出版社なのでは。

 本が売れないとよくいいます。もちろん、世の中が本を読む人を減らす方向に進んでいるということもありますけれど、そうでない部分もあるようです。
 書店に行っても欲しい本がないということですね。書店が出版社に注文しても、本が配られないということです。
 出版業界、硬直していますね。どこの出版社もかわりない。同じような種類の本を同じように作って同じように売っています。
 経営学の本を読んだら、こういう業界いっぱいでてきます。過去の話として。どういう話かというと、どの会社も同じよう、多様性がない。業界のルールに従って、同じことを繰り返している。そこに新しいタイプの企業があらわれ、業界のルールをかえてしまう。もともとの会社は、おいしいところを全部新興企業にさらわれて沈没。そういう事例研究として、出版業界みたいな硬直した業界がよく取り上げられます。
 経営学アメリカが一番進んでいるのでしょうね、アメリカの事例です。自動車業界、航空業界、コンピューター業界、テレビ放送業界。大きな産業ですからね、みんなと同じにやってれば安心みたいになりがちなのでしょうね。現在の日本の出版業界も同じでしょう。みんなで一緒に沈没しているから危機感がないのかもしれません。
 ということはですよ、新興企業として出版業界に乗り込めばよいのでは?
 どういう企業でしょう。わたくしが思いつくのは、電子書籍専門の出版社です。
 紙の本は、再販価格維持制度、返本制度、取次、書店、いろいろと無駄なものがひっついています。返本のリスクは出版社が負っています。もちろん、本の価格にリスク分上乗せされているわけです。それぞれのプレイヤーが全部利益をとりますから、それも本の価格に乗っているわけです。高コスト体質。
 いまの電子書籍は、紙の本を出している出版社が同じように出しています。価格も紙の本とあまり変わりません。紙の本を売りたいのでしょうね。電子書籍を安くしてみんなが電子書籍を買うようになったら紙の本が売れなくなるからですね。
 電子書籍なら、在庫リスク、返本のリスクはありません。取次もいりません。電子書籍販売サイトだけですね。本の値段、さげられます。1500円で売っている本が800円で買えてもおかしくありません。電子書籍専門の出版社なら、そうするでしょう。某電子書籍販売サイトはいっつも数十%オフのクーポンをメールで送ってきます。半額のときもあります。本当はそれだけ安くできるわけなのです。
 電子書籍専門出版社、1年経ったら半額なんてことにすると、400円に。たとえば、ベストセラーになってもう十分稼ぎましたよって電子書籍は、3年経ったら無料ということにしたら、多くの人がサイトで無料の電子書籍を買うかもしれません。その中には、電子書籍初めてという人もいて、無料のを読んだあとはお金を出して電子書籍を買うかもしれません。一度電子書籍を買って読んだという経験をしてもらうことが大事なんですね。そのハードルを、無料の電子書籍で越えてもらうという作戦。
 何度か書きましたけれど、紙の本はきっと、今よりずっと売れなくなります。今のレコードみたいになるんじゃないですかね。マニアだけのものに。ディスクユニオンが将来の書店の形かもしれません。新刊が出なくなったときのことを考えれば、ブックオフがそれに相当すると気づきます。
 紙の本が好きな人は、紙の手触りとか、重みとか、匂いとかを紙の本の良さとして挙げます。もうこれ、マニアですよね。
 でも、本を読む人は減ってもいなくはならないでしょう。本当は増えないといけないと思いますけれど。学習のためですね。大人も学習しないとやっていけない世の中になるでしょう。エンジニアの人にはご納得いただけると思いますけれど。
 やっぱり電子書籍専門の出版社、出てくるんじゃないですかね。誰もやらなかったらおかしいってくらい、簡単に思いつくアイデアです。雑誌なんかは電子版しかないなんていうのもすでにあります。

 既存の出版社だって、いつかは紙の本はもう出しませんとなるはずです。きっと経営がもうヤバいってときになって苦し紛れに決定することになるでしょう。経営学の知識からはそう予想できます。かつての硬直した業界の会社がみなそうだったのですから。そのころには新興の電子書籍専門出版社においしいところを取られていることでしょう。
 あと、もうひとつのアイデアとして、セブンイレブンが出版に進出というものがあります。セブンイレブンの店舗数多いですね。物流の力すごいですね。販売予測もすごい。企画力もすごい。本にセブンイレブンパワーを使ったら業界はひっくり返るかもしれません。
 ただ、セブンイレブンが出版に進出するメリットがあるかわかりませんけれど。