生産性の低さの正体

 一田和樹さんのシェアードワールド「選ばれて異世界に転生した100人が全員自殺した話」にわたくしも参加しています。

 生産性の低い人を異世界に転生させるという設定です。日本の労働者の時間当たり生産性は36のOECD加盟国中20位だそうです。良い成績とはいえませんねえ。

 こういう背景が、シェアードワールドにあるのでしょう。

 さて、なぜ成績悪いんでしょうか。日本は経済大国ではなかったのでしょうか。GDPが中国に抜かれたにしても世界3位なんではなかったんですかね。

 まず、日本の労働者人口はわりと多いということがあるでしょう。アメリカや中国とくらべれば少ないのですけれど。割り算の分母が大きいから、商が小さくなる道理です。

 でも、それだけではないようです。日本の会社がもうかっていないのですね。では、なぜもうかってないのでしょう。もうからない事業をつづけているからです。

 日本の産業は古いのです。古いことをずっとつづけていて、もうもうからなくなっているのです。新しいことをやらないといけないのに、ずっと古いことをつづけている。

 さらに疑問です。なぜ古い事業をつづけているのでしょう。誰が古いことをつづけているのでしょう。大企業ですよね。車業界はまだよいのですけれど、家電やハイテク産業なんていうやつですね。あれがもうからない。

 家電なんてモジュール化されているわけです。部品を仕入れて組み立てて売れるのです。新興国で大量に作りますから、安い、もうからない。わかりやすいですね。ハイテク産業は、もう中国ですよね。深圳が有名です。

 三十年くらい前は、日本の東京人が世界最先端のライフスタイルだったのではないかと思うのですけれど、今は深圳なのでしょうね。

 日本のテレビでバカにしたり、失敗しそうみたいな論調で新しい取り組みを取り上げたりしていますけれど、物凄い勢いでトライ・アンド・エラーしてたら、あっという間に成功までたどりつく人や会社が出てきます。実際、新しいことは深圳から生まれています。

 日本にはその勢いはありませんね。もうダメでしょう。一度乗り遅れたら取り返しがつきません。だって進歩はどんどん加速してゆくのですから。別の機会を狙うしかないでしょう。

 

 というわけで、日本は産業のシフトに失敗したという話ですけれど。失敗したからそのままということはないわけで、そのうちにはシフトせざるを得ないでしょう。

 いまだに家電メーカーの工場で働いている人がいたら、10年後はちがう仕事をせざるを得ないのではないですかね。

 産業のシフトに失敗した理由。ええ、大企業がもうからない事業をつづけている理由。経営者が無能ということはありますけれど、国が助けているからですね。

 法人税をさげました。年金資金を株に突っ込みました。円安誘導しています。デフレを継続しています。これ全部大企業、お金持ちを優遇する政策ですね。

 デフレはカネの価値が高まります。企業は投資を控えて内部留保と言って、金をため込んでいます。インフレになって、金の価値が目減りするとわかっていれば投資をして金をかせごうとなりますけれど、デフレですからね。投資をしてヘタなことするより、お金を貯め込んだ方がよい。もうからない大企業にはたまらない政策ですね。だから、従業員を解雇して事業を縮小しているのです。

 もちろん、特をする人がいれば損をする人がいるわけで、給料があがらず、消費税があがった、中間層が消えた、こんなキーワードを目にしますけれど、一般の国民である会社員が損をしたのですね。

 大きな目で見れば、国民の金を大企業にまわして助けているわけです。国の借金1000兆円なんていいますけれど、そのカネは誰に払われたのでしょう。大企業ですよね。そのカネは誰が将来払うのでしょう。消費税があがって、負担する将来の国民ですね。

 日本はアホなことに、将来の国民の富まで奪ってもうかりもしない大企業にバラまいている。そう思わない人もいるようですけれど。わたくしはそのように理解しています。

 まだ、疑問をつづけることはできますね。なぜ政府はそんな大企業を優遇するのか。わかりきったことだからもう述べませんけれど。