九乃がこそっと教える、小説家のマーケティング

マーケティングのお話

 九乃は元経営コンサルタントですから、マーケティングにも少し詳しいという設定です。マーケティングの話をしてみるつもりです。経営学を教えていたわけではありませんから、人に伝えることはヘタクソでしょう。
 もし気になって、マーケティングについて知りたいと思ったら、本に当たった方がよいですね。九乃の書くことが正確である保証はございません。いちいち本で確かめることをせずに思いつくまま書くつもりですから、勘違いや誘導があるやもしれませぬ。

素人にも関係ある?

 マーケティングといったら、商品を売るテクニックのようなイメージをおもちの方が多いでしょう。現在のマーケティングというのは、企業活動の広範な部分に関係しています。けれど、今回書く話は、その昔ながらの狭い意味のマーケティングをイメージしてくださればよろしい。小説を多く売るための活動のお話です。
 素人には小説を売る機会がほとんどありません。では、今回のお話は関係ないかというと、そんなこともないでしょう。小説を書いていれば、小説家になるチャンスもあるでしょう。小説家というのは人気商売でもありますから、素人のうちから人気があれば、スムーズに小説家としての商売をはじめられると予想できます。
 小説家を目指していない素人でも、投稿サイトの小説とか読んでほしいのだと思います。それなら、小説家が小説を売るのとあまりかわらない構造になります。

関係性マーケティング

 ネットが普及しました。お客さんと企業が直接つながるコストは、だだ下がりです。ほとんどタダという時代です。マーケティング手法も影響を受けました。関係性マーケティングです。
 お客さんと良好な関係を築き、継続し、商品を買ってもらう。そういう手法です。この関係の部分にネットが貢献しますね。

マスマーケティング

 一般的なマーケティングのイメージはこちらでしょう。テレビでCMを流したり、新聞広告を出したり、交通の多いところに看板出したり、大勢の人間にひとつの材料でリーチする方法です。古臭く、もう廃れました。
 テレビを見る人も、新聞を見る人もあまりいません。それに、誰が見るかもわからない。効率が悪いのですね。それから、印象が薄い。全校集会における校長先生の挨拶みたいなものです。誰も気にしません。
 対して、関係性マーケティングは、ピンポイントでその人をターゲットにしますから、校門に立ってひとりひとりに話しかけるイメージですね。話したくない人はさっさと通り抜け、ちょっと話したいことがあれば立ち止まる。

いきすぎ

 関係性マーケティングというのは、ひとりの人間を対象に一対一の関係をつくります。あまりしつこく話しかけられると、誰でも嫌になります。同じことが起こりました。セールスのためのメール、メールマガジン、毎日大量にやってきて。迷惑メール設定で自動的にゴミ箱に入るように設定している人もいるでしょう。中身を確認しないで捨てる人もいるでしょう。
 いきすぎました。関係性マーケティングをみんながはじめたからですね。もう効果はありません。他人と同じことをしても意味がない。ゴミに埋もれるだけです。

インバウンド・マーケティング

 インバウンド・マーケティングというのを提唱する人がいます。関係性マーケティングは、しつこく話しかけすぎました。
 インバウンド・マーケティングは、机の上になにか個性的なものを置いてみるような方法です。いえ、全然違うかもしれません。九乃がいま考えた説明です。
 まわりの人は気になって話しかけたくなりますね。それなに?なんにつかうの?向こうから話しかけてくるようにしむける。そういうアイデアです。向こうからこっちにやってくるイメージがインバウンドっていう意味です。ネットに詳しい人ならインバンドの意味わかってると思います。

具体的方法

 具体的な手法も提案されています。本が出ているので、気になったら読んだらよいと思いますけれど、大したことは書いてありません。ネットに親しんでいる人だったらみんなやっていることです。
 ブログを書き、ツイッターでつぶやき、フェイスブックでつながり、ウェブサイトでまとめる。人に知ってほしい、買ってほしいと思ったら必ずやりますね。

まずは与える

 わたくし九乃も、「インバウンド・マーケティング」たしかそのもののタイトルだったと思いますけれど、読みました。一読する価値だけあります。わたくしは読んで処分しました。
 実はこの本自体がマーケティングの一環なのですね。インバウンド・マーケティングのためのソフトウェア・ツールを売る会社の人たちが書いたものです。
 すでに書いたように、たいした内容ではなかったのです。ひっかかることがひとつ書いてありました。
 まずは与えよということです。
 サイトを閲覧にきた人、ブログを読んでくれる人、ツイッターでフォローしてくれる人、みんなに読む価値のあるものを与えましょうと提案していました。すると、どうなるでしょう。価値あるものを提供してくれる人というのは、その分野で尊敬されます。リーナスさんは人間性が批判されることもありますけれど、OSの世界では尊敬されます。そんな感じ。
 尊敬されるまでいかなくても、それなりの地位を得られます。ほんの狭い範囲であっても。

見つけてもらう

 価値あるものを発信しても、ネットで見つけてもらえないと存在しないも同然です。フォローしましょう、知恵袋みたいなところで回答を書きこんであげましょう、議論にまざりましょう、他人をブログで紹介しましょう。相手は、ありがたいなと思って、こちらに興味をもってくれるでしょう。そう思いませんか?わたくしは、まんまとハマると思います、この手法。だから、有効なのではないかと、思ったのです。

小説家の話をはじめる

 マーケティング、出版社や書店がやってくれる部分もあります。名前の売れている人はそれでよいでしょう。たいして知られていない、たいして売れていない、そういう人は、自分でもマーケティング、やったらいいと思います。ほとんどタダでできますからね。コストは時間ですかね。でも、ツイッターくらいは、すでにやっているでしょう?あともう少し時間を割くだけです。

小説家が与えるもの

 価値あるものをまず与える必要がありました。小説家が提供できる価値あるものとは何でしょうねえ。あ、自分で考えるんですよ?素晴らしいアイデアが浮かぶことでしょう。九乃の考えに従う必要なんてないのです。
 一般の読者はなにがほしいでしょう。インタビューなんかで小説家はなにを聞かれますかね。そういうことを、ツイッターでこまぎれに発信するとよさそうです。執筆スタイルとか、どんな本を読んだとか、なにか興味のあることについてとか。

 短い小説を無料で読めるようにする手もあります。ほんのちょっとしたものです。知念実希人が自作を原作としたドラマの放映開始にあたってやってました、これ。note に公開したのですね、ごく短い小説みたいなものを。
 新刊を出版するときは、新刊について書いたらよいでしょう。まとまった形にしたほうがよさそうです。ブログに書きましょう。書いたら、ツイッターで書いたと宣伝しましょう。
 一般読者から、小説を書いている人、書きたい人に目を移したらどうなるでしょう。自分が小説を書きたいと思ったキッカケについて書けますね、はじめて書いたときどうだったのか書けます、どうやって技術を磨いたのか書けます、アドバイスを書けます。一度書いたら、価値の薄れない内容ですね。ウェブサイトに公開して、ブログやツイッターから誘導すればよさそうです。

一対一

 ここまで、簡単にできることを書きました。ここからですよ、問題は。名前や存在を知ってもらえたとして、本を買ってもらえなければマーケティングは失敗です。ここから、一対一でつながる必要があるのです。
 一方的に発信するだけではダメですね。校長先生の挨拶と変わりません。ひとりひとりの生徒に話しかけるというのは、今の話では何に当たるでしょう。これも自分で考えるのです。九乃のいうことに従っていては、どうなることやらわかりませんよ?
 前置きしつつ。ツイッターでフォローしたら、ツイートが流れてきます。話しかけるタイミングを待って、話しかけるのです。すでに名前を知られている予定ですから、そういう人が話しかけてきたらうれしいですよね。つながりができます。
 投稿サイトに公開されている小説にコメントをつけるのです。有益なコメントが得られれば、作者は泣いてよろこび、サポーターになってくれるかもしれません。かもしれません。
 ひとりひとりに手間をかけていられるかと思うかもしれません。そのやりとりは、公開されているのです。ひとりとのやりとりは、実は多くの人とのやりとりにもなります。知らない人のために気さくにアドバイスをしてくれる。そういう認知が得られれば、敬意をもってもらえるのではないですかね。相手以外の人からも。
 小説家というのは人気商売ですから、尊敬を勝ち取れれば人気に勝るのではないかと思います。本だって買わなくちゃいけない気になりそうです。おカネを払ってでも本を買うというのは、ほとんどそういう気持ちからくるのではないですか、これからの時代。無料で読めるコンテンツが山盛りあるのですから。

一田和樹

 カクヨムで自主企画を開催してくださっています。わたくしは、小説ができあがれば投稿して、そうすると一田和樹が一日とおかずレビューしてくれます。おすすめレビューというやつですから、ダメなところに気づけるということはありませんけれど、うれしいものです。ただ公開しても誰も読んでくれませんからね。レビューしてもらえることも稀です。
 賞に応募する人向けに連載を書いてくださっています。小説を書く人には価値ある情報です。価値ある情報を発信する人のところに情報は集まります。人も集まります。マーケティングの機会になるでしょう。

新人賞受賞は運=確率! 1年9カ月で投稿96回、受賞2回、最終候補6回!(一田和樹) - カクヨム

 わたくしは一田和樹「原発サイバートラップ」を購入し、読み、感想をブログに書き、それをツイッターで宣伝しました。一田和樹にとって手間のわりには収入にならず、わたくしの宣伝効果なんてありませんけれど。わたくしに限ったことです。フォロワーが大勢いる人なら宣伝になります。いま口コミはマーケティングで重要です。
 一田和樹がマーケティングのつもりでやっていることではないでしょう。でも、人はこのように行動するものなのですね。自分で学びました。まず与えよの実践といってよいでしょう。
 プロの小説家で、名前が売れていないというなら、マネしたらよいと思います。小説を書いている人が本を買ってくれれば、固定客ゲットでないですか。

ダメな例

 ついでにダメな話をしましょう。
 小説家仲間だけで会話している人です。周囲に疎外感を与え、話しかけづらく、読んでためになるものがなにもありません。そのうちフォローをはずされるかもしれませんね。
 本の宣伝だけ。悪くはないのですけれど。つまらないですね。なにもしないよりはマシくらい。宣伝しても宣伝にならないでしょう。せっかくなら、もう少し時間と手間をかけてみたらどうかと思います。身辺のことをツイートするだけでも、親近感が湧きそうです。小説家のことを知りたい人は多いようです。

素人も同じ

 わたくしのような素人でも同じです。投稿した小説を読んでほしかったら、他人の小説を読み、レビューを書きます。レビューされた人は、そのことを知りますよね。レビューしてくれた人がどういう小説を書いているか気になるかもしれません。お返しにレビューしてくれるかもしれません。レビューはサイトのトップにすこしのあいだ掲載されますから、宣伝になります。ほんのちょっぴり。やっぱり同じことで、まずは与えることが大事でしょう。
 わたくしは、小説を読んでくれたとわかると、その人の小説を読みに行きますし、レビューを書くようにしています。カクヨムで読んでもらっても一円にもなりませんけれど、そうしたくなるからするのです。

出版社がなくなったら

 経営学的と銘打っていくつかブログの記事を書きました。出版社がなくなる未来もあり得ます。自分で本を売らなければならなくなるかもしれません。小説家もマーケティング、はじめてみたらどうでしょう。そのときにはプロと素人の境界はかなりあいまいになっていそうです。