「たったひとりの決戦」は、アイデアが思いつかなくて苦労しました。
他のショートストーリーは、一日で考えて書き、一日で見直しというテンポで書いてきました。
けれど、これ、一週間考えつづけました。バレンタインチョコを渡すパートですね。
苦労話、ちょっと聞いてくださいよ。
前提
九乃がバレンタイン前からチョコをもってきてはロッカーに置いておき、昼休みに食べるということ。これは根岸がチョコを渡す作戦に利用したいですね。
昼休みに食べますから、たとえば九乃のチョコに紛れ込ませておくなんてことを考えると、昼休みまでに別の場所に移動しないといけません。
アイデア
チョコを鴨くんに知られずに渡したいのですね。なにかに偽装するというアイデアが思いつきます。部活の道具とか。卓球のラケットなら、チョコで形をつくってすり替えるのに大きさ的によさそうとか思います。
覆いをかぶせておいて、鴨くんが知らずに家にもちかえって、覆いに気づき、はずしてチョコを見つけるというのもありだと思いました。偽装の延長上ですね、発想としては。
苦しみ
偽装も覆いも、なにに偽装したり、なにで覆ったりすればよいか、決め手に欠けます。九乃のチョコを利用することと結びつけなければなりません。ここからですよ、考えつづけたのは。
お風呂
日本人は湯船につかってお風呂に入ります。これは日本人の編み出した最高の習慣です。湯につかって考えごとをします。
6日くらいはダメだったのですけれど、7日目くらいにやってきました。ひらめきが。
九乃のチョコは九乃が利用する。根岸は弓を使ってチョコを届ける。
このアイデアですね。九乃が毎日チョコをもってきていたのを、根岸は作戦であったと思うのですね。
裏設定としては、ロッカーをまちがって、自分のロッカーにしまったつもりなのですね。ですから、鴨くんが登校してきて、そのあとは九乃のロッカーにチョコが移動しているわけですけれど、そんなことは根岸のあずかり知らないところです。
弓矢でもってチョコを届けるというアイデア、具体化するにはどこからどこへ矢を放つか、矢をどうやって利用するか、考えることがまだあります。
2月ですから、寒いですね、教室の窓を開けていることはないでしょう。なにか設定をたして無理やり窓を開けさせてもよいかもしれませんけれど、そんなの思いつきませんし、教室の壁かなにかに矢が刺さったら気づきます。そのあとからチョコがやってきたら、誰からかバレバレですね。
うさぎ小屋に鴨くんがいることにしました。とってつけましたね。しかたない。
矢のお尻に紐を括りつけておいて、弓で射るという映像、どこかで見たような気がしたのですけれど、検索しても見つからない。どうやって矢に括りつけるのか、射るときなにか工夫があるのか、知りたかったのですけれど。
釣り糸を結び付けていたことにしてでっち上げました。コメディであり、ショートストーリーでもありますからね。
あとは小細工を弄してうさぎ小屋へチョコを運び、鴨くんが気づいて、チョコが手元へ届くと。
最悪の場合
アイデアが思いつかなければ、単に鴨くんのロッカーに置いておくことにしたかもしれません。さらっと流してしまうのですね。そうすると、ひとり相撲感がかなりうすれますけれど。
そう、この小説は、勝手に九乃をライバル視してひとり相撲を演じる女の子の物語なのです。九乃は外からのぞいています。うまくいくように手を貸したりしますけれど。
苦労と面白さは比例しない
アイデアをひねりだすのに苦労したからと言って、面白くなるとは限りませんけれど、アイデアが出てこなかった場合よりはかなり面白いことになったはずです。わたくしのあずかり知らぬところです。面白く読んでくだされば、面白くなるでしょう。
今回は苦労話でした。ごきげんよう。