酒本歩「幻の彼女」(光文社)の感想を書きます。
といいつつ、まず自己紹介。他人のふんどしでブログのアクセスを伸ばす作戦ですから、わたくしのことはじめましての人も読んでくれると見越してですね。
九乃カナです。二年くらい長編小説を書いては賞に応募していました。昨年一年は小説をお休みしていましたけれど、年明けから短編を書いてはカクヨムで公開しています。本当は今年も小説を休む予定でしたけれど。また休みに入らなくてはいけません。
ブログのカテゴリー名は小説のタイトルがほとんどです。ログですからね、小説を書いたときの記録を残しています。
福ミスにも二度応募したことがあるのです。だから、「幻の彼女」が受賞した回も応募していたのだと思います。残念、一次選考落ちでした。
「これ、書きたかったけど書けなかったやつ!」
説明が必要です。
映画「陽だまりの彼女」を観ました。突然彼女が消えるというキャッチフレーズにつられて観たのです。チラシとか見なかったのですね。てっきりミステリーだと思っていたら、ファンタジーでした。
それで、ミステリーで彼女が突然消える小説を書いてやろうと、小説を書きはじめた頃に思い立ったのでした。立ったのですけれど、これがむづかしい。どうして姿を消したの?ですよね。アイデアには、なにかトリック的なものも同時に浮かんでくるはずなのです。セットです。けど、いまだにいいアイデアが思いついていません。
しばらく経ってから気づきました。それ、「異邦の騎士」!主人公の前から彼女というのか、事実婚の奥さんというのか、女性が突然姿を消すのですね。で、御手洗君がからんできてという。いつかは書きたいものです。
酒本歩「幻の彼女」ですよ。なんと三人消えています。パワーアップしておる。で、まずビックリ。
島田荘司の言葉として「本格ミステリーの歴史に、新たな項目が加わった」と帯にあります。彼女が消えるだけでなく、なにかすごい謎があるらしいと理解しました。
これは誤解でした。謎は、なぜ彼女たちは消えたのかです。
わたくしなんかが思いつくような理由は作中、早々に却下されてしまいます。それに、主人公と出会う前の彼女たちの消息も掻き消えているのです。説明がつきません。
いえ、なにかの計画が事前にあって出会いも演出されているのだろうとは、多くの人が思うのでしょうけれど、そこまでです。そこから一歩も進めません。手ごわい謎。
分量は多くありません。休日なら一日で読めます。わりとシンプル。しっかりした構造の小説です。
病院勤務の友人と、ドッグシッターの仕事のお友達?の二本の軸です。消えた彼女たちはドッグシッターの線からはじまっています。
謎と解決が強いからシンプルでわかりやすくしているのでしょうね。自信の表れと理解しました。
【ここから先、半分ネタバレ】
この解決というか、知識。わたくしもなにかの小説で使えないかなーと考えていました。サイエンス系の本を読むのが好きですからね。エピゲノムなんかの話とならんで興味のある分野でした。ここでも「これ、書きたかった」です。