今回も九乃の頭の中をのぞいてみます。
はじめのタネ
「リ・チェンジ」のタネは、「死活監視」に原点回帰するころだという認識です。「死活監視」から三作は連鎖的に生まれました。これを書いたら次はこれを書かないとね。そんな連想です。抽象的にはごく簡単なことでした。具体的な内容を思いつくのは簡単でもないのですけれど。
自動的に決まること
「死活監視」にもどるとなると、自動的に入れることが決まってしまうネタがあります。
- マフラー。アイリが川澄にプレゼントしました。
- ペットボトル。事件の核心でした。
- 映画撮影。映画撮影していましたね。
- 原作小説内の殺し屋
すぐに思いつく課題
- 今度はアイリと川澄を、映画班の方がジャマしたい。逆を行くわけです。なにをジャマするか。
- 夏の暑いときにマフラーをさせないといけない。
- もう一度映画を撮らせなければならない。
- 殺し屋は転職した。どんな仕事をしているか。
映画を撮るアイデアのまえは、上映会を考えていました。映画を撮ることを思いついてよかった。
山小屋のアイデア
どういう経緯で思いついたのか忘れました。山小屋で雷雨に遭えばしばらく閉じ込められるなと。「リ・チェンジ」のためということはなく考えついたのかもしれません。ともかく、利用するとどうなるか考えます。
殺し屋は山小屋で働いていることにできます。映画原作の登場人物ですから、ミステリィ研究会の人たちも山小屋へやってきます。アイリは登山好きと設定を追加してしまえばよいですね。ペットボトルは小さな問題ですから。なんとでもなります。マフラーは、山は冷えるとか言って使わせることができます。
よさそう
山に舞台を設定できたら、ちょっと雰囲気変わって面白そうです。
残る問題
殺し屋に依頼がこないことには、原作小説がはじまりません。どうやって依頼がくるのか。誰をどうやって殺すのか。しかも、失敗させて、また転職させようと決めました。どうして失敗するのか考えないといけません。できればヒドイ目に遭わせたい。失敗させるからには依頼を断らないといけなくなりました。
さらに、欲張りになって、「なんでもない殺人事件」のコカ・コーラの瓶も登場させたいと思いました。
かなり進んだ
アイデアがかなり進んだと感じられたのは、川澄にプロポーズをさせようと思いついたときです。プロポーズしようとすると邪魔される。面白そうじゃないですか。コメディにしかなりませんけれど。連作短編のシリーズはずっとコメディですから、よく馴染みそうです。
どこでどうやってプロポーズさせましょう。あらたな問題。
見切り発車
殺し屋のターゲットやなんか、プロポーズのこと。全部は決まっていませんけれど、書きはじめました。一気に書けませんから、ちょっと書いては視点をかえて書きました。短い章がつづくのは、そのせいです。あれはあれでよかったと思います。ちょっと実験的な感じがして。
書き出し
書き出しはこれだよなと、殺し屋からはいりました。すると、郵便屋さんがやってきました。わたくしは呼んでいなかったのですけれど。キャスティングされていたみたいです。これで依頼ができます。同時に、依頼人を郵便屋にするかもという可能性が頭をよぎり、メモっておきました。あとのことですけれど、実際採用になりました。
反射神経的に書く
あとは、思いついたらちょっと書き、ということを繰り返して書いてゆきます。ネタがあるところは書きやすいのですけれど、ないところは、小説の世界できょろきょろして書くべきことを探します。
小説内小説とキャッチボールみたいにして書いてゆきましたから、むづかしいというほどではありません。
それより、先のことが心配です。誰をどうやって殺しましょう。どこでどうやってプロポーズさせましょう。プロポーズをどうやって邪魔しましょう。
穴埋め
書き進めながら、穴がひとつ埋まりました。殺し屋の失敗の部分です。「アイリと川澄に死体役を見せるから、ターゲットじゃない人を殺しちゃったことにするのかな。」とメモにあります。失敗は、人違いです。
決めた
ずぶ濡れの死体を発見することに決めました。いや、もうそういう流れになってましたからね、勝手に。アイリがいますから、川澄とちがってしっかりしています。死んでいることを確認しようとします。簡単にネタがバレてしまいます。作者としてはなにか盛り上がってほしいところですけれど、アイリがいるのですから仕方ありません。
となると
殺し屋の方も決まってしまいます。同じ殺し方です。こっちは、殺し自体は失敗しません。本当のターゲットのことかアイデアがありません。それでも書き進めます。
逃亡シーンはそうなるよねってところを書きました。なんの工夫もありません。
さて
予定からずれてきましたよ?プロポーズを邪魔するはずが、できそうもありません。だって、死体のところネタバレしたら、映画の撮影だとわかり、春に会っていた人たちだってわかってしまいますからね。撮影にかこつけて邪魔するアイデアはうまくゆくのでしょうか。なんか、ミステリーっぽいですね、小説を書くのって。
どうなることやら
やっぱり郵便屋さんにお願いするしかありません。郵便屋さんを登場させました。このあたり、警察の動きとか、郵便屋さんにはいる情報とか考えてしまうと、書けません。
きっと無線で警察に通報しますよね、山小屋から。そうすると殺し屋が姿を消したということもわかって、怪しいとなります。
郵便屋さんへの情報の伝達は、山小屋の別のスタッフがケータイで知らせることができるかもしれません。ドコモは山でもけっこうつながります。そういうことにできます、裏設定で。
警察はどうなるでしょう。山小屋までヘリを飛ばしますかね。すくなくとも、山小屋から逃亡した人間がいますから、登山道を封鎖しそうです。郵便屋さんが登ってこられないか、殺し屋もアホでないから、警察の動きぐらい読むでしょう。なんだか知能戦になって、複雑。文字数が足りん。となりそうです。
無視しました。警察。
エンディング
プロポーズはジャマできない。川澄くんをいじめてやりたかったのですけれど。苦し紛れに一発ぶっ放してやりました。コーラのネタも滑りこませて、こんなものかなということにしました。
ゴミでも
わたくし、小説に思い入れが小さいのです。ツマラナイことは書きたくないなんて思いません。どうせツマラナイ小説しか書けないと思っていますから、ツマラナイことでもネタにして、ネタを消化してゆきたいのです。溜まりすぎていますから、ネタが。
頭の訓練になりますかね、必要なネタをひねり出すところが。失敗もありますけれど、今回のように。
ごあいさつ
今回は、書きあがる最後の方まで考えながら書きましたから、ブログも長くなってしまいました。いろいろな小説があって、いろいろな生まれ方をしているのでしょうね。「リ・チェンジ」はこういう生まれ方をしました。