(ブログ連載小説)幻のドーナツ

(ブログ連載小説)幻のドーナツ #9 最終回

目次へ 9.幻は幻のままが、夢があっていいのです 幻のドーナツの行列に大蔵は並んでいる。どうやら、今度こそ念願のドーナツを口にできそうだ。女子高校生でもドーナツひとつにそこまで胸躍らせないだろうというほど、大蔵の胸はワルツを踊り狂っている。 …

(ブログ連載小説)幻のドーナツ #8

目次へ 8.そんなことじゃないかと思ってたでしょ? 朝食のあと、相坊が門のところまで車で迎えにきて、警察署へ出勤だ。車内では、パソコン教室の裏付けと、被疑者宅のカレンダーで予定をチェックし、アリバイの確認もするように指示した。「おはようござ…

(ブログ連載小説)幻のドーナツ #7

目次へ 7.ふたりベッドの中 被疑者と並んでベッドにはいる。大蔵は天井を見つめる。「はじめてなんだ」「なにが!」 被疑者がガバッと起き上がった。「係長として事件を担当して被疑者を逮捕したの」「なんだ。あー、ビックリした。って、ホントかよ。よく…

(ブログ連載小説)幻のドーナツ #6

目次へ 6.奥さん本当にいたんですね「いやー、大蔵さんのお宅にお邪魔するのははじめてです。奥さんにもとうとうお会いできるんですね」「いや、相坊はここで帰ってくれ。駐車スペースがないんだ。この道は駐車禁止だし」「そんなー」 大蔵はメンドウにな…

(ブログ連載小説)幻のドーナツ #5

目次へ 5.やっぱりかつ丼、これが夢だった「さて、このままじゃ取り調べもできないし、取りあえずかつ丼食うか」「いりませんよ。どうせ自腹なんでしょ」 被疑者はつれない。「いや、おれがおごる。な、かつ丼食べよう」 大蔵にとってかつ丼は夢だったのだ…

(ブログ連載小説)幻のドーナツ #4

目次へ 4.副署長、女性です「大蔵さん、行ってきました」「で、なんだって?」「大蔵の手首切り落とせって。それでとりあえず被疑者は帰せだそうですよ」「うそ。まじで?」「冗談だと思いますけど」「だよね。だよね。うん、それで?」「それだけです」「…

(ブログ連載小説)幻のドーナツ #3

目次へ 3.取り調べもできないんじゃ、仕方ないな「手錠をはずしてくれ」「え?大蔵さんカギもってないんですか?」「自分でもってるんだっけ?」「そうですよ」 相坊はポケットから自分のカギをつまみ出してチャラチャラと振ってみせる。「じゃあ、それ貸…

(ブログ連載小説)幻のドーナツ #2

目次へ 2.ちゃんと捜査したんですよ?書いてないけど 被疑者のアパート。サクラさんたちはベランダ側を見張ってくれている。大蔵は相坊とともに部屋をたずねる。 ピンポーン 中でチャイムが鳴るのが聞こえた。被疑者は現在無職で、張込みの結果、在宅だと…

(ブログ連載小説)幻のドーナツ #1

目次へ 1.まあ、ゆっくり行きましょう。ドーナツでも食べてね 大蔵は会計を済ませ、歩道の端で待機している相坊に近づいてゆく。大蔵はよろこびのあまり、頬がにやけるのを押さえられない。相坊は相坊で、興奮気味だ。「大蔵さん、やりましたよ」「ああ、…

(ブログ連載小説) 幻のドーナツ 目次

「幻のドーナツ」は全9話です。 1.まあ、ゆっくり行きましょう。ドーナツでも食べてね 2.ちゃんと捜査したんですよ?書いてないけど 3.取り調べもできないんじゃ、仕方ないな 4.副署長、女性です 5.やっぱりかつ丼、これが夢だった 6.奥さん本当…