「リアルタイム」第2話 思いつかない12月2日

 九乃カナは背伸びした。背が高い九乃カナが背伸びすると大した高さに手の先が達する。
「うーん、やっぱりブログは楽でいいな。ツイッターは140字だからおしゃべりなわたくしには窮屈なのだよ」
「知りませんよ、そんなこと」
 付き合わされる読者はさすがに勘弁してほしいという表情。九乃カナも人の表情を読むことはできる。ただ、他人の表情は無視することが多いだけだ。


「ここまできても死体は見つからないか。おかしいな。わたくしに挑戦状を突きつけておいて、やっぱり殺していませんでしたなんて通らないぞ」
「誰に言ってるんですか。作者なんだから九乃さん本人か」
「うん? なにが?」
 九乃カナはごまかした。読者は自作自演を疑う目をしている。目の表情を読んでもやっぱり九乃カナは無視をする。反応してもよいことはなにもないからだ。都合の悪いことはなかったことにする。生きる知恵だな。

 

 九乃カナは困っていた。思いつきで読者を巻き込み、近況ノートやブログへ引っぱりまわしたまではよかったが、死体のことを考えていなかった。誰を殺して死体にしてやろうか。小説のキャラにしようか、カクヨム仲間の誰かを血祭りにしてやろうか。
 うん、思いついた。次でカタをつける!

「よし、ゆくぞ! ワトソン君」
「ワトソンじゃないんですけどね」
 九乃カナは共犯者に対する仲間意識をもって読者の肩を抱き次の世界へ突き進んだ。
 九乃カナの去ったブログには空虚が残った。

 

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