カクヨムに「ちょっと気軽に時間旅行なんて」を全4話連載しました。

カクヨム2020夏物語

 カクヨム2020夏物語というコンテストに向けて書いた短編です。はい、規定文字数の4000文字に収まらず、4350文字までいったのですけれどね、あきらめたあとにすこし言葉を補いまして文字数増えました、コンテストに応募はできなかったのです。ひとり2020夏物語となりました。

 「文字数オーバー、ひとり2020夏物語」みたいなタイトルで自主企画を開催して同じことになった人たちから小説を募集してもよいかと思いましたけれど、メンドクサイからやらないことにしました。

最初の方向性

 2020夏物語用の小説を考えていまして、2020年夏の場面を含むことでしたっけ、規定がわかりにくいのですけれど、天邪鬼ですから2020年夏はできるだけ短くしようと思っていました。
 はじめの思いつきですけれど、布団でゴロゴロしながら考えていて、気がついたら書きだしをこねくっていました。第2話あたり、それからタイムマシンに乗る、そんなことがはじめに決まったと思います。
 タイムマシンで過去に戻るのにコールドスリープを使うわけですけれど、このふたつが組み合わさることで「夏への扉」に思考がつながり、猫を登場させようと思いつきました。これで書けるなと思ったのですね。全部布団の中で決まりました。
 あとは暇を見つけて書いてゆくだけです。

第1話のこと

 婚約者をナガルという名前にしました。漢字は流です。一文字で、文章に入れると埋もれてしまうし、主人公の頭の中では漢字よりナガルという音で認識されているという言い訳を思いつきまして、カタカナで通しています。漢字は裏設定。
 婚約者を殺すのに連続通り魔殺人事件を使いました。なにも考えずに殺せて楽チン。道を歩いているだけで死んでくれますからね。主人公の婚約者ということにしてウエディングドレスの試着に行くことになっていました。よりドラマチックになるかと思って、ただのデートにはしません。
 書き出しから、なにか乾いたようなかすれたような印象をもってほしいと思って描写からはいっています。主人公の目から見た壊れた世界の描写です。婚約者を殺されて虚無的になっている、感情を失っている、そんな表現を目指しました。殺伐感出ていますかね。第2話も同じです。

第2話のこと

 第2話で被害者遺族の会合がありますけれど、実際に事件が起きたときこんなことがあるのかは知りません。でも、熱弁男を登場させましたから、ほかの事件がどうであってもこの事件に関しては会合が行われたということで説得力あるかと思います。
 春に事件があって、会合は夏です。秋葉原の事件を調べると、地裁の初公判までに1年半かかっているようです。裁判もはじまっていないのにと書きましたから、調べておきました。
 第2話で主人公の思考を表現しました。第1話で婚約者とは学部時代から付き合っていたと書いてほのめかし、第3話で20年後の視点から博士論文を書き研究者になっていたことが明かされます。事件のときはまだ博士課程の学生だったのですね。主人公は情より理の人です。抽象的に思考するのが得意。それで、社会だのなんだのとこむづかしい話になるのですね。第2話は読んでも面白くないパートかもしれません。

第3話のこと

 第3話で20年後になっています。年を削りました。2040年とはじめは明記していたのですけれど、20年前にもどるとニャンコに話しかけていますしね、2040年のことだとわかると決めつけました。
 ニャンコとの会話、本当に話しているような感じを目指して書きました。特別な能力があるという設定ではありませんけれど。家族感が出ているかなと自己評価しています。
 イッセキという名前は漢字で一石です。4話で過去の主人公が話しかけていますけれど。アインシュタインからきています。アインが一、シュタインが石という意味、あわせて一石。時間旅行にアインシュタイン一般相対性理論は欠かせませんからね、猫の名前で利用しました。
 事件から20年経っていて、ニャンコと3年暮らしていますからね、気持ちはいくらか持ち直しているかもしれません。雰囲気はほんわかに変えました。ニャンコが出てきたらそうなってしまいますよね。
 事前には特に考えていなかったのですけれど、書きながらニャンコも一緒に過去へゆくことになりました。第4話を描くのに、連れてゆくことにして正解だったと思いましたよ。
 タイムマシンの設定は布団の中でできていましたから簡単。ただ、時間をさかのぼる途中にタイムマシンが場所を占めるべきところにモノがあると衝突してしまいます。衝突したらどうなるのですかね、わかりません。モノがなさそうな、あっても雪くらいだろっていう南極に行ってから過去にさかのぼることにしました。

 第1話、第2話の一人称俺にかわり、第3章からは一人称を私に変えました。研究者ですけれど社会人ですからね、すこし変化があったのです。

第4話について

 第4話は過去についたところからはじまっています。自動で位置も移動していて、南極から群馬の山奥に。よく死体が隠されても見つからないと言われる群馬の山奥。タイムマシンを隠すのにももってこいです。温泉もありますから、主人公とイッセキは温泉を堪能します。ということは小説の舞台は関東なのでしょうね。ほかの地域なら別の山奥があることでしょう。
 事件の日待ち合わせをしていた公園で、20年前の自分に会います。20年でいくらか社会性を身につけていますから、かつての自分を分析してみたり。挨拶に本心で返さなくてもいいよみたいな。
 イッセキを過去の自分に託します。これによってイッセキという名前の説明ができてお得でした。
 見直しのときに修正したのですけれど、過去の自分との会話と、過去の自分がイッセキに話しかけているところ、セリフ書きをやめました。これにより、セリフは主人公とイッセキとの会話だけになりました。第1話、第2話にセリフがありませんし、このほうがスワリがよいように思いました。

全体的には、どうでしょうね

 「夏の扉」から引用、エピグラムというのでしたっけ、文字数を確保するためにあらすじにいれる工夫をしたのですけれど、無駄でした。4350文字になりましたからね。規定文字数に収まらず。

 この小説、前半でガツンと殺伐としたことを書き、後半で時間旅行、ニャンコとコミカルなSFの雰囲気に。ちょっとちぐはぐな印象でしょうかね。でも、この小説はこれで、ほかにかえようがないかなと思いまして、完成としました。

主人公、どうなっちゃったの?

 最後、主人公が去りますけれど、なにをどうするつもりなのでしょうね。未来にもどるつもりはなさそうですかね。イッセキをあずけて、たぶんもう引き取らないと覚悟しているようです。公園にもどって、どうもお世話様と言ってイッセキを引き取ってもおかしくはありませんけれど。
 ナガルに会えたらいいけれどなんて言っていますけれど、どうなのでしょうね。犯人のこの日の行動を調べてきていますから、犯人には会うつもりが、というかそのために、時間旅行してきたのですよね。現実をかえたら別の世界になってもとの未来に帰れなくなってしまうことにタイムマシンを降りて気づいたのですし。
 このあとどうなったのでしょう。きっと犯人に殺されちゃったのでしょうね、それでナガルを守れたのでしょうか。やっぱりナガルは殺されてしまうのでしょうか。自由に想像してくだされ。って、二択かよ。