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「大正地獄浪漫」ですけれども、第3巻について記事にしたところ、わたくしのブログのアクセスランキングでトップをつづけていまして、これは4巻も記事にしなければいかんと思っていたようなわけです。アクセスを稼いでもわたくしになんの利益もありませんけれど。
はい、記事はこちら。
しばらく小説読んでいる場合ではなかったのですけれど、やっと時間的にも気持ち的にもすこしだけ余裕ができましたから、遅ればせながら第4巻、シリーズ最終巻ですけれど、読みましたよ。
てなわけで、これがその記事でございます。最後までお付き合いのほど、お願いいたします。
「大正地獄浪漫」第4巻はこちら。一応宣伝。
こちらの記事、本の宣伝をしたいところですけれど、前回と同じく読み終わった人向けの記事となります。ネタバレあり。
これから買おうかなという人、もう買ったけれどまだ読んでいない人 、ネタバレしたら面白くありませんから、ここから先は読まないでください。読んでおいて、ネタバレじゃないかと言われても、だから注意しただろとしか言いませぬ。
すこしだけ、まだ本を買っていない人たちに本を紹介しておきます。親切ですな。
全4巻。ラノベと言ってよいと思います。キャラ文芸。でも、エグイお話がちょいちょい出てきますから、そういうの好物という人にお勧めします。
エロもグロもイヤという人は、近づかない方がよいでしょう。一田和樹さんにはサイバーミステリーがありますから、そちらをどうぞ。
視点の問題
わたくしも小説を書きますから、テクニック的なところに興味がいきまして。
大正地獄浪漫は一人称の眼鏡屋視点と、三人称視点がミックスされています。つまり、眼鏡屋がこの文章を書いていて、三人称視点の部分は想像や伝聞だということですな。
すこし珍しい形式。一人称視点で書くときは視点を固定して、主人公が経験しなかったことは書けないことになっています。誰が決めたルールか知りませんけれど。
でもたしかに、あたしが主語の文章のあとに三人称他人視点の文章がくるとすこし違和感があります。
京極夏彦のデビュー作「姑獲鳥の夏」は一人称で、関口君の見聞きしたことしか書かれていません。
二作目からは三人称が出てきて、一人称の関口君の語りと両方ありになります。ただ、章の区切りで視点が交代しますから、違和感は薄い。
「大正地獄浪漫」は章単位ではなく頻繁に切り替わります。
しかも、第4巻の途中からは一人称の眼鏡屋が組織の外に出てしまいますから、三人称多視点が増えてきます。自然の理。キャラがそれぞれの思惑でてんでバラバラに行動するとなれば、視点の切り替えが増大。
ドラマやアニメ、画像がともなうと視点の切り替えはスムーズ。まったく違和感なく受け入れられますけれど、小説ではそうはいきません。
視点が変わるごとにどのキャラの視点で書かれているか示さないといけない。メンドクサイし、文章のクオリティが落ちます。
京極夏彦は、章のはじめを視点人物の主語ではじめます。頭から視点人物を示しますからわかりやすい。でもちょっとダサい。
大正地獄浪漫はアニメ的といってよいでしょう。改行で視点がかわったことを示しています。誰に変わったかはすこし進まないとわからなかったりします。そこにちょっと違和感が生まれるのですね。
で、結局読みにくかというと、リーダビリティは高い。
しかも、内容的に読みにくい文章で書きそうだし、時代的にもなにか文章を脚色したくなるところですけれど、フラットな文章で書かれています。たいへん読みやすい。
ラノベなのですね、じつは。
大正を舞台にキャラ文芸
内容は、3巻からのつづきとなりますけれど。大正のデモクラシーが盛り上がったころの話で、時代がストーリーにも関わってきます。
デモクラシーなんてもってのほか、賢い選ばれた人間が国を率いるべきだと言うイデオロギーのもと活動するのがゲヒルンという組織で、陰謀、暗殺おかまいなしの超法規的組織。
暗殺集団の主要人物がラノベ的濃いキャラをしています。
時代物、キャラが立っていると言うと、幕末・明治維新を思ってしまいますね。尊王攘夷派、幕府側、新選組、勝海舟とか、外国人の外交官なんてのもいるし、キャラが豊富。明治維新はキャラ文芸の宝庫やー!
キャラ文芸がいっぱい書かれているかどうか知りませんけれど、一般文芸でもいっぱい小説はありますよね。司馬遼太郎とか。幕末純情伝とか。まあいろいろ。るろうに剣心もありました。それはマンガ。
大正地獄浪漫はオリジナルキャラで、現実の社会イベントが小説内でも起きるみたいです。大正のころ知りませんけれど、時代考証みたいなことをしていたそうですから、きっとそうなのでしょう。あとがきに書いてあります。参考文献もありましたね。
幕末・明治維新は有名なイベントがいっぱいあってやりづらそう。大正はマイナーだから使い勝手がよいかもしれません。
第4巻の作り
第3巻までで、外の敵との戦いは終わりました。小説的に。第4巻は内向きに話が進みます。
まず、眼鏡屋はゲヒルンから追い出されます。
そこから話は動き始めるわけでして。主要キャラがどんどん死んでゆく、帯に皆殺しとあるくらい。あれは主要キャラを皆殺しにするという作者の宣言ですな。いや、出版社が勝手に考えたのでしょうけれど。きっと、大和民族みなごろしという意味ですね。
ここでわたくしの話をして恐縮ですけれど、恐縮しつつずうずうしく話はするのですね。
「キガトウ国の滅亡」という短編小説を書いたことがありまして。桃太郎をもとにした小説ですけれど、鬼の側の視点から書きました。
どこか架空の王国から逃げてきた人たちがちいさな島に逃げ込みます。王国からの攻撃に備えているのですけれど、嵐で難破した船の乗組員を助けたら、桃太郎の国の人で。解放した結果、桃太郎がその島に乗り込んできて鬼側の人たちを殺しまくり、残った女子供は奴隷にしてしまうというひどいお話。
いえ、ちょっと作りが似ているなと思って、ついでに宣伝です。といっても、もうすぐ非公開にしてしまいますけれど。たぶん明日。(※非公開にしました)
大正地獄浪漫七不思議
さあ、ずうずうしく自作宣伝したところで落ち着いて話を進めましょう。さっきまでお尻がもぞもぞしていました。
第3巻のときのブログ記事を振り返ります。
大正地獄浪漫七不思議というコーナーをやりました。ええ、そいつを検証しましょう。完結しましたから、解答が出揃ったはずです。
ひとつ、片目金之介の顔を覆っている包帯は片目を隠しているのか両目か。第1巻第2巻あたりを読んだときに、挿絵に反して両目を包帯が覆っているように読めたのですね、わたくしには。それで、どっちなんだということですけれど。
片目だけ、包帯で覆われていました。
挿絵のとおり。片目は片目を花鳥に差し出していて、義眼がはまっているのですね。で、包帯で隠していた。邪眼ではなかった。
ちなみに、一田和樹さんの著書に「義眼堂」があります。いまだツン読中ですけれど、よろしかったらチェックしてみては。
はい、ふたつめ。片目が蓬莱をどうやって見つけてきたか。この問題も解明されました。蓬莱は片目の弟でした。それで、蓬莱を探していたのですね。ぽっと見つけて拾ったわけではなかった。
つぎ、みっつめ。氏家って何者? ですけれど。こちら、わたくしの推理は蓬莱にあてはまってしまいました。氏家はなんの関係もない、ただの東大出の賢くて、倫理観がトチ狂った人間というだけみたいです。くっ、ダマされた。誰もだましていませんけれど。
よぉーっつ。青島解脱は何者? これも解決しました。一般人ではないやろと推理していましたけれど、本屋との因縁というより、人形屋の一族のものでした。
以下略。
挑戦状の答え合わせ
同じく第3巻のときの記事より。
第3巻の本編ラストで、眼鏡屋は片目にある提案をしたとあって、わたくし前回その内容を推理していました。
片目も本の読み手、本の読み手同士で結婚するとよいことがある。ということで、片目に結婚をもちかけたと推理しました。
うーん、当たらずも遠からず。おしいところまで迫っていたのではないでしょうか。
眼鏡屋は第4巻はじまってすぐ葛城と結婚してしまいました。相手は片目ではなかった。
ところがところが。その後明らかになりました。眼鏡屋の提案の内容。
葛城と結婚する前にふたりの間の子供を作ろうという提案でした。たしかに、片目とは夫婦になれなさそう。
で、第4巻一番の笑いどころ、眼鏡屋が片目をはめた話になるわけです。ぶはははと笑いましたよ。みなさんも笑いましたよね。
わたくし、第3巻の記事で片目の姉が狂ったと書いています。眼鏡屋は姉がカプセルにはいっているところしか見ていないはずですけれど、そうなると狂っているかどうかわからないわけで。うーん、そうではないシーンがあったような気も。いちいち確かめませんけれど。
第4巻では狂っていない、本の読み手としての片目永遠が登場します。
読者は読みたいように読むものですからね。いつの間にかヘンな思い込みをしたりするものです。誤読は読者のトッケンだもん!
意外な人物の活躍
第4巻、入鹿山碧が大活躍します。本屋側について最後まで生き残りますしね。主要キャラの死にいろいろと関わっていますし。
入鹿山は情報に通じているのですな。収集し、分析し、どう対処すべきか考える。策を弄し、相手をはめる。そのために技術を使う。武術だけではない。
現代的ですな。こんな、現代的な資質の人間が生き残りうまくやってゆく。そういう時代。今はますますそういう時代でしょう。メッセージ性があります。
対して、神にも比すべきかという片目は第4巻にきて一気に凋落。いいところなしでした。お姉ちゃんでてきてしまいましたしね。このお姉ちゃんもスーパーマンかと思いきや、遅れてきたヒーローであまり活躍できません。残念。
ラスト近くで喫茶店の屋根から大砲ぶっぱなしますけれど、屋根が崩れて一瞬の活躍で終わってしまいました。
人形屋が仕掛けたわけですけれど、屋根の強度がもたないと自覚していました。だったら補強したらよいのでは、と思いますけれど、単なる余興、戦力として期待してはいなかったからそこまでしなかったということでしょうかね。
現実は
大正地獄浪漫、デモクラシーが盛り上がるところで眼鏡屋というか本屋の野望が語られて幕となりました。
大正デモクラシーはポシャるのですよね。で、全体主義、軍国主義に向かい、結局日中戦争、太平洋戦争となって大日本帝国は滅びます。
大正デモクラシーがポシャッた時点で、本屋の野望は一度くじけたのでしょうかね。よくわかりません。
千年も戦い続けていましたから、本屋と花鳥たちと、なにを争っていたのかもよくわからなくなっていたのですよね。
花鳥たちは朝廷を守るとか言っていますけれど、鎌倉幕府とかずっと武士の時代だったわけですし、ということは花鳥たちはずっと負け続けていたってことですかね。それとも朝廷がなくならなければオッケーだったのか。
で、明治維新で一矢報いて、大正地獄浪漫の頃が絶頂期の終わり、とうとう戦いも終わって花鳥たちの惨敗ということだったのかな。
※ツイッターで著者の一田和樹さんがブログ記事の宣伝ツイートに返信? をくださいましたよ。
おそらくこのあたりのことについて。本編ラストで述べられているお孫さんが健在ってことは、というコメントがついていました。眼鏡屋が未来を予知しているシーンですな。
岸信介のウィキペディアでも見てくださればよいかと思いますけれど。現在の状況は本屋の企みのとおりだということをほのめかしています。つまり、わたくしたちは大和民族滅亡の途上に生きているということなのでしょうね。さてどうなるものやら。
天皇も渡来系
天皇は渡来系ですよね。天孫降臨でしたっけ、朝鮮半島からやってきてどこか九州のあたりに流れ着いた。
で、先に住んでいた人たちともめごとを起し小突かれながら大和に落ち着いた。きっとその頃の辺境の地だったのでしょうね、先に住んでる人たちがいなかった。
で、落ち着いてから勢力をのばしていった。渡来系の人たちをどんどん呼んだのでしょうね。知識や技能がある人たちです。ドラクエのモンスターみたい。
ということは当時のまわりの人たち、朝廷の人たちはみんな渡来系。仏教を輸入したり、お寺作ったり、大仏作ったりしました。金属器を作るのだって渡来系の人たち。
大和民族ってなに? ってな話になります。天皇なんて呼んだり自称したりするのもずっとあとみたいですな。桓武のころでしたっけ。平安京? 社会苦手ですから、弱腰です、わたくし。
片目や人形女給兵団の人たちは鬼だということで、どうも大和民族に対する、そのほかの民族、渡来系? ということになりますけれど。使役する朝廷側だって渡来系じゃんとなります。一応大和民族のテイで話は進んでいますけれど。
のちの天皇になる人たちと一緒にやってきた人たちが大和民族なのですかね。もっと前にいた人たちは、ほとんど駆逐されてしまった? わたくしの知識では解決しない問題でした。
次回
大正地獄浪漫は完結しまして。アウトテイクがカクヨムに投稿されています。そちらはまだノーマークなのですけれど。きっとそのうち。
こちらですな。いま2万文字くらいあります。まだ連載中となっていますから増えるかも。
さて、わたくしの手元には一田和樹さんの小説がまだ2作、それに犯罪「事前」捜査とありまして。つぎはどうしようか。
小説は義眼堂と安倍響子。安倍響子かな。サイバーミステリーですね。
CTFとか、デジタルフォレンジックとか小説のネタにならないかなと思っていまして。いえ、詳しくないから勉強しなくちゃいけませんけれど。となると、サイバーミステリー読むのもなにか役に立つかなと思ったりして。下心。
ではまた次回、安倍響子を読んだでお会いしましょう。ばいばい。